虫歯の基礎知識

歯ブラシ

数ある健康問題の中で日本人がもっとも悩むことが多いのは「虫歯」です。ある統計によれば、日本の成人になった人の実に9割以上が経験したことある、と言われているほど、現代の日本を代表する病気なのです。実際に、厚生労働省による平成23年歯科疾患実態調査の統計をみてみると、20歳以上80歳未満の年代の中で、現在虫歯にかかっている人、もしくは虫歯治療を終えた歯がある人が8割以上いることが分かっています。幼少の頃から大人になるまでこれほど多くの方が経験していて、よく悩まされているにもかかわらず、なぜそもそもそのようなことが起こるのか?虫歯について正しく理解しているという方はあまり多くはいません。日本には数多くの歯医者さんがいますが、しっかりとした正しい虫歯の仕組みを知っておけば、歯医者に診てもらう際にその効果は絶大になります。正しい知識を事前に持っていれば、内容によっては、わざわざ歯医者さんに行かなくても自分で対応できるレベルの場合もありますしね。この記事では虫歯の基礎知識について詳しく解説します。予防にも役立ちますからぜひともしっかりと虫歯の仕組みを知っておきましょう。

虫歯とは?

歯の治療器具

虫歯とは、歯の表面に付いているプラーク(歯垢)に潜む虫歯菌が食べカスなどに含まれる糖を栄養源にして酸をつくり出し、その酸によって歯が溶かされてしまう病気のことです。初めの段階は痛い、しみるなどの自覚症状がほとんどないので、知らず知らずのうちにどんどん進行してしまうこともあります…。

この「気づかない」という点が、病状をどんどん悪化させてしまいます。冷たいものを食べるとしみる、歯がズキズキ痛む、といった病状がでた時点だと、虫歯はもうすでにかなり進行してしまっています。

虫歯の原因

甘いもの

それでは、なぜ人は虫歯になってしまうのでしょうか。口の中には、歯にとって良い菌と悪い菌を含めたたくさんの細菌(さいきん)がいます。たくさんの菌の中でも、一番虫歯になりやすい原因になっている菌といわれるのが「ミュータント菌」です。ミュータント菌という細菌が作り出す酸によって歯が溶けていく病気になり、やがて虫歯となるのです。

虫歯の仕組み

食べ物に含まれる糖分によっては、ミュータンス菌は活発に働き、プラーク(歯垢)というネバネバした自分たちの住家を作っていきます。このプラークには数えきれないほどの菌が住みついています。ご飯を食べた後にハミガキを長い時間しない、または歯のみがき残しがあるなど、さまざまな理由でプラークを放置したままにすると、さらに菌は増えていき、ミュータンス菌を中心とする菌がプラークの中で歯を溶かす原因となる「酸」を発生させます。歯は、この酸がとっても苦手なのです。

この酸によって、エナメル質の内部から歯の成分であるカルシウムやリンを溶け出すことで、虫歯の原因を作っています。

虫歯は、「歯(歯の質)」と「細菌(歯垢)」と「糖質(とくに砂糖)」の3つの要素によって成り立っています。それらが重なり、一定の時間が経ったときに発生して作られたと考えられます。この3つの要素が重なっている時間をいかに短くすることが虫歯を防ぐためにとても重要です。

お口の中に普段中性(pH7)に近い弱酸性ですが、糖分を含む食べ物を食べると急に酸性に変わります。中性と酸性の間にあるpH5.5を下回ると、歯からミネラル分が溶け出して、その状態が頻繁に起こると、虫歯になりやすい口内環境になります。

唾液(だえき)によってこのPH調整がされるのですが、間食が多くなると弱酸性に戻る前にまた酸性化してしまい虫歯になりやすくなってしまいます。虫歯を予防する一番効果的な方法は、ご飯を食べた後にハミガキをすることです。

虫歯になる主な3つの要因

これまでの説明で虫歯になる仕組みは、ざっくり理解いただけたと思います。それでは、虫歯になるのか・そうではないのかを大きく左右される要素はなんでしょうか。それは主に下記の3つにわけられます。

虫歯菌の量
口の中に虫歯菌が増えれば増えるほど、歯を溶かしてしまう酸が多く作られる環境になってしまうことになります。プラークは虫歯菌のかたまりなので、プラークが多いと虫歯になりやすくなります。
糖の量
口の中に食べカスが残った状態でも糖が多ければ多いほど、虫歯菌の栄養源が多くなります。糖の量が多いと、それだけ虫歯菌の動きが活性化してしまいます。
特に、だらだら食べることや、寝る前の間食は歯にとって大敵です。
歯垢のpH(酸性度)は、ふだんは中性なのですが、砂糖を含む物を食べると、一定時間は酸性に変わります。ですが、数十分後には唾液などの働きによって元のpHに戻ります。
砂糖を含まれるものを間食していない場合などを除けば、基本的に1日に3回の食事のときだけ歯垢は酸性になり、それ以外のときは唾液の働きのおかげで歯が守られています。
しかし、1日の中で砂糖が含まれている食べ物を何度も食べていると、歯が酸性になる時間が長くなり、やがて虫歯になりやすい環境になります。特に寝る直前に間食をすると、寝ている間は唾液が出にくい状態になってしまうため、歯の表面に固く付着したよごれは酸性のままになります。
砂糖が含まれているものを1日に何度も食べないようにするのと、寝る前に間食は避けるようにしましょう。
歯質の強さ
人によって個人差がありますが、歯質の強いほど虫歯菌をつくりだす酸に対抗することができます。逆に、歯質が弱ければ弱いほど虫歯になりやすくなります。また、不規則な生活や、食生活の乱れは、歯質をもろくするといわれています。

虫歯を放置しておくことのリスク

虫歯を我慢したり、なにもせずにそのままにしておくことは、痛みが大きくなる以外にもさまざまなリスクが生まれます。ある程度虫歯が進行すると、自然に治ることはなく、そのままに放置しておけばするほど、痛いだけではすまなくなってきます。

症状に気づいたら、なるべくできるだけ早く治療するようにしたいですよね。

次に、虫歯を放置するデメリットについてのほんの一例を、箇条書きで挙げてみます。参考にしてみてください。

  • 治療が複雑になって難しくなる
  • 治療する期間が長くなる
  • いざ治療した時の痛みが大きくなる
  • 治療費の負担が大きくなる
  • 満足に食べ物を噛めなくなる
  • 口の臭いがきつくなる
  • 見た目がよくなくなる
  • 歯の寿命が短くなる

虫歯が進行する前にできること

歯は、一度虫歯になってしまうと、もとの健康な歯に戻すことは基本的にはできません。なので、普段から心がけたほうが良いこととして、

  • 意識的に規則的な食生活をすること。
  • 毎日定期的な歯のセルフケアをすること。

はもちろんのこと、なるべくその症状を早く見つけて、すぐに治療をすることができれば、健康的な歯を長く保つことができます。もし、自分でその症状が見つけられないなど、少しでも不安・心配がある場合は、歯医者・クリニックで定期的に検診を受けてみることをおすすめします。

虫歯は、その進行の度合いによって4つのレベルに分類されます。次の章では、虫歯の進行状況について詳しく説明していきましょう。

虫歯の進行状況

馬の歯

エナメル質の虫歯

歯の表面やみぞなど限られた狭い範囲が、廃白色や黄褐色、黒褐色に変化します。歯の表面(エナメル質)に穴が開いた状態です。通常は、まだ痛みやしみる感じはありません。これに気付いた段階で治療を行うと、痛みも少なくおこなえます。

象牙質の虫歯

虫歯が歯の内部に広がり、象牙質に達した状態です。甘いものや冷たいものを食べたときにキーンとしてしみる痛さを感じることがあります。これに気付いた段階でも、比較的早く治療が完了します。

歯の神経の虫歯

虫歯が歯髄(神経)まで進んでいる状態です。虫歯の穴は大きくなり激しい痛みを感じます。なにも食べていない状態でも、普段の生活で痛みを感じることがあります。

この段階まできてしまうと歯冠部(歯肉から上の見える部分)はほとんど虫歯に侵食されているため、虫歯を取り除く治療を行った後に、歯形をとってかぶせ物の制作を行い、それを歯にかぶせないといけないため、治療の期間が長くかかります。

歯の根の虫歯

歯冠部はほとんど壊れていて、歯の根っこだけ残った状態(残根状態)です。歯の神経(専門用語で歯髄とも呼びます)が死んだ状態だと、痛みを感じることはありませんが、痛みを生じる病状がさらにあごの骨まで進行することもあります。歯の根っこの先に膿(うみ)が溜まっていくため、膿を取り除く必要があります。

膿を取り除き、虫歯治療を行った後に歯形を取ってかぶせ物の制作を行い、それを歯にかぶせなければならないため、治療の期間がとても長くかかります。最悪の場合、歯を抜かなければいけない場合もあるので注意しましょう。また、この段階まで虫歯が進行すると、あごの骨まで感染する恐れがあり、骨の周囲にある骨膜に炎症させる病気を起こして顔が大きく腫れてしまいます。

なお、すでにミュータンス菌等の虫歯菌が口の中に定着すると、単純にハミガキをしただけでは取り除くことはできないことも、頭に入れておきましょう。

毎日のケアで虫歯をなくそう!

綺麗な歯並びの女性

では、事前に虫歯を予防しておく、あるいは初期の虫歯の段階から健康な状態に戻すには、どのようにすればよいでしょうか。ここではいくつかの有効な方法と事例をご紹介したいと思います。

ハミガキ

使用される鍼には様々な種類がありますが、日本では身体に痛みを感じにくいとても細い鍼を使用しています。人それぞれ身体の症状や状態が異なるので、人によって鍼の太さや長さは違ってきます。一般的な鍼の特徴としては、長くて細い鍼を使用して治療を行います。

治療方法

特にフッ素入りのハミガキ粉は、虫歯を予防する上では重要な役割を果たします。

フッ素には、歯のミネラルの補給を促進して、健康な歯の状態に戻す働きがあります(これを、専門用語で再石灰化とも呼びます)。また、フッ素によって再び石灰化した歯は、酸に強くなるために、虫歯になりにくいです。

歯にフッ素を効果的に取り込ませるポイントは、フッ素入りハミガキを歯ブラシに1g以上つけて、少なくとも2分間以上はブラッシングすることです。

注意したいのが、歯にフッ素をいったん取り込ませたとしても、口をすすぎすぎると溶け出してしまうので、口をすすぐ回数はなるべく少なめにするようにしましょう。

規則的な食生活

口の中に虫歯の原因となる細菌がいたとしても、必ずしも虫歯になるとは限りません。細菌が増えないようにする生活習慣を意識的に取り組めばよいのです。細菌は増えてしまう生活に慣れてしまうと、虫歯になりやすいのです

具体的には、私たちがものを食べるときに食べカス(特に砂糖が含まれているもの)を口に含んだ状態のままでいと、細菌が増えやすくなります。なぜなら、細菌はその食べカスを養分にして増えていき、酸を作っていきます。その酸が私たちの歯を溶かし、虫歯になるのです。

特に私たちの生活に深く密接にかかわっている生活習慣ですが、虫歯の予防したい・気を付けたいのならば、普段の食生活で意識的に砂糖は極力とらないようにしましょう。

よくかむこと

よくかむと、口の中ではだ液の分泌量が増えます。

だ液の中の成分には消化を助ける働きがあるだけではなく、口の中の清浄・清潔にする働きもあり、歯周病や虫歯の原因菌をおさえるパワーを発揮します。

次に、だ液の役割について詳しく箇条書きで説明します。

  • 口の中の清浄・清潔にする働きがあります。
  • 味覚と消化を助けます。
  • 悪い働きをする細菌の成長・増殖をおさえて口の中に粘膜を守ります。
  • 虫歯で溶け出そうとする歯の修復を助けます。
  • 総入れ歯のあごへの吸着を助けます。

かみごたえがある食べ物を選んで食べましょう。

たとえば、昆布、こんにゃく、野菜などの食物繊維の多い食べ物やスルメ、小魚などは噛み応えがあってよいでしょう。ガムも手軽で食べれて噛みやすいのでおすすめです。

調理方法を工夫して、食べるときの噛む回数を増やすこともありです。たとえば、サラダに入れるキュウリやトマトなどは、薄切りにするよりも一口の大の輪切りにすると噛む回数が増えます。

また、別のメリットとして、よくかむことは、だ液の分泌をのためだけではなく、肥満防止と老化防止におおいに役立ちますので、無理のない程度にかむ食事をすることも大切です。

間食しない食生活

食事をとることごとに虫歯の菌は糖分をもとに、酸をつくり出して歯をとかすことを進めます。3回の食事以外に間食するという人は、それだけ歯がとかしやすい環境になってしまいます。

可能であれば、歯のことを配慮するためにも間食は控えること。そして、虫歯の原因になる糖分を控えましょう。もちろん、甘い飲み物を飲むことも控えましょう。

寝る前は必ず食べない

じつは、寝る30分前の飲食はとても危険です。飲食した後にそのまま眠ってしまうと、歯についたものが虫歯にとってエサになり繁殖してしまいます。

夕食を食べた後でも、ついついおやつや夜食に手を伸ばしてしまうこともすくなくないでしょう。また、おなかがすいたまま眠るのはつらいからついなにかたべてしまう……という人も少なくないです。

起きている時間帯であれば虫歯のエサになるまでにだ液で清浄・清潔してくれますが、寝ている時間帯はずっと歯にくっついたままになるという可能性がでてきます。さらに、寝る直前の飲食は、歯だけではなく胃にも負担をかけてしまうものです。

寝る直前にどうしてもなにか口にしたいという場合は、あたたかい白湯などの糖分が入っていない飲み物を飲むようにするとよいでしょう。

まとめ

綺麗な歯の犬

いかがでしたでしょうか?虫歯の基礎知識についていろいろとご紹介しました。虫歯が発生する条件と環境だけでもいくつかあるのがご理解いただけたでしょう。実際に、世の中の人は虫歯で悩んでいる人は少なくありません。虫歯を頻繁に起こっているときは、自分自身の食生活とハミガキの仕方が原因かもしれません。クリニックや廃医者さんにみてもらうだけでなく、自分でも解決できないかどうかをやってみて、検討してみてください。

別ページでは、虫歯に関するお役立ち情報を随時ご紹介してまいります。このページと合わせて参考にいただければと思います。虫歯の悩みを解消していただくために役立てると信じています。